かけがえのないもの
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12月半ばを少し過ぎた頃、ホグワーツはクリスマス休暇の為あわただしくしていた。

いつもは見送る側だったハリーも、今年は帰る事にしていた。

愛しい人が待っているから。

前の日からハリーは落ち着かなかった。

明日、久しぶりに彼に逢える。

考えただけでワクワクして、くすぐったかった。

父親の様で、

恋人の様な存在。

一刻も早く彼に逢いたいとハリーは思った。

逢ってしまえば、時が過ぎるのは早くて、楽しかったクリスマスはすぐ過ぎてしまった。

クリスマスはシリウスと二人きりで過ごせてすごく楽しかった。

しかし、クリスマスの後にはもうひとつ、重大なイベントが残っている。

ー等の本人は、そんなに重大だとは思っていないみたいだが…。


「ねぇ、シリウス」

「何だ?」


「もうすぐシリウスの誕生日だよね、何か欲しいものある?」

シリウスは「ああ、そう言えば」とまるでひとごとの様に視線をハリーから天井へと泳がせた。

「ハリーがくれるなら何でもいいさ」

そう言って、おでこにキスを落とす。

ー言うと思った。

クリスマスも、シリウスに大きなプレゼントを貰ったハリーが「シリウスにも何かあげるから何がいい?」と聞いたら、同じ答えが返って来た。

ー欲が無いのか。

関心が無いのか。

とにかく、いつも同じ反応だった。

だがハリーも、シリウスの誕生日とあっては何もしない訳にはいかない。

そこで誕生日までの数日間、ハリーは内密に計画を立てる事にした。



「という訳なんだけど、何にしたらいいと思う?ハーマイオニー」

「う〜ん、定番だと時計とかだけど…もっと違うものがいいわね」

「うん…あんまり高い物だと…、それにお父さんとお母さんが残してくれたお金はあまり使いたくないな…」

「そうね…でもハリー、一番大切で、一番大好きな人にあげるんだったら、大事なのはその気持ちを伝えることよ。

大好きって云う気持ちが伝われば、きっとシリウスも喜んでくれるわ」

「気持ち…」



そして、シリウスの誕生日当日。ダイニングのテーブルには二人で作った沢山の料理が並べられた。

最初はハリーが一人で作ろうとしたのだけれど、「二人で作った方が楽しいから」とシリウスも一緒に台所に立った。

「…自分の誕生日なんか、すっかり忘れていた…何年ぶりだろうな、こんな風に祝って貰うのは…」

目の前のグラスに注がれた、ワインに写った自分の顔をぼんやりと見つめながら、シリウスは呟いた。

「これからは毎年、祝ってあげるからね」

そう言って微笑むハリーに、シリウスも嬉しそうに微笑み返した。

夕食が終わり、二人で後片づけをしたあと、二人はソファーに座って一休みをする事にした。

シリウスがぼーっとしていると、ハリーが肩に頭を預けて来た。

そのしぐさに苦笑し、シリウスはハリーの頭を優しく撫でる。

やわらかなハリーの髪は、シリウスの大きな手が動く度にさらさらと流れた。

心地良くて、うとうとして来た時に、ハリーはハッと気付き、唐突に身体を起こした。

「そうだ!プレゼント!」

そう叫んで、ハリーは自室へと駆けて行く。

戻って来た時は手に赤い包装紙に包まれ、金色のリボンがかかった小包を持っていた。

「ハイ、プレゼント」

「私にか…?」

「当然、他に誰がいるのさ」

「そうだな、ありがとう、ハリー」

くすくす笑い合いながら、プレゼントを手渡す。

「開けていいか?」

「うん…気に入るかどうか判んないけど…」

シリウスが丁寧にリボンをほどいて包装紙を除くと、中には黒いセーターが入っていた。

「編もうかとも思ったんだけど、時間なかったから買う事になっちゃって…」

「いや、十分だ…本当にありがとうハリー…」

申し訳なさそうに覗くハリーの横で、シリウスは嬉しそうに、しばらくセーターを眺めていた。

「あとね、もう一つ」

そう言ってハリーはシリウスの小指に、自分の小指を絡めた。

「『僕はこれからもずっと、シリウスを好きでいます。』」

「?」

「『指切りげんまん嘘ついたら針千本のーます』」

「なんだ?それ?」

「マグルのおまじない!これで僕は一生シリウスを嫌いになれないよ」

「?どういう事だ?」

「ずっとずっと、大好きだよ、シリウス…」

ぼーぜんとしているシリウスにハリーがふっと口付ける。

ハリーにとっては精一杯の、軽いキスだった。

「ハリーからしてくれるなんて珍しいな…」

やっと意味が判ったらしいシリウスは、恥ずかしそうに俯くハリーの頬を大きな手で包み、今度はこっちから、とハリーに口付ける。

小指をハリーの小指にもう一度絡めて。

「私も、愛してる」

シリウスはハリーの視線を捕らえて呟いた。

「…うん、誕生日おめでとう、シリウス」


二人はその日が終わる真夜中まで、ずっと寄り添い合っていた。

お互いに、小さな幸せを感じ合いながら。



END















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