Acoustic
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君の声が聞きたかった

ジェームズの声でも

リリーの声でもない

君自身の声が聞きたかったんだ…



「おおおおおおぉ!」

占い学の教室で、トレローニーが大きな奇声を発した。

毎回繰り広げられるこのトレローニーの一人芝居に、いいかげんハリーはうんざりしていた。

「大きな犬が見えるわハリー!!おお恐ろしいっ!!」

そんなモノ、ハリーには当然見えやしない。

「あなたにはお見えにならなくって?ハリーポッター」

トレローニーはさも恐ろしそうにハリーにカップの表面を覗かせた。

何の形にも見えない。

犬の形だなんて、耳の形すらなかった。

「すみませんトレローニー先生、眼鏡が歪んでいるみたいで、僕にはヤギが映っている様にしか見えません…」

(ブッッ)

隣でロンが吹き出した。バレない様にと机の下に身体をうずめている。

「もしくはしわくちゃの宇宙人」

ハリーが付け加えた。

(ブゥーッッ!!)

ロンが我慢しきれず机の下で身体を震わせてヒーヒー言っていた。

トレローニーはそんなロンを無視し、ハリーに憐れみに似たまなざしを向けた。

「…よろしいでしょう今日の授業はここでおしまいです」

いつもの定位置に戻る途中、トレローニーは

「嘆かわしい…」

とかぶつぶつ言っていたがハリーは無視することにした。



「はー笑った笑った」

占い学の教室からしばらく歩いて、廊下に出てからロンが背伸びをした。

「はあ…僕いつまであんな事言われ続けなきゃなんないんだろう」

ハリーががっくりと肩を落とした。

「そりゃ、トレローニーの目がグリムを見れなくなるまでさ」

それを聞いてハリーはホグワーツにいるうちはまず無理だと思った。

ふと、廊下の窓の外で何かが動いた気がした。

「ねえロン、今窓の外で何か動かなかった…?」

「へ?気付かなかったけど」

ハリーはじっと窓の外を見続けた。

ロンもしばらく見ていたが何も動く気配はない。

「なんにもないって、行こ」

ロンが目を放し、歩き始めると、また窓の外で何かが動いた。

何か、黒い塊のようだった。

「やっぱり何かいる!僕確かめてくる!」

そう言ってハリーは外へ駆け出して行った。

「あ!ハリー!気をつけろよ!」



エントランスを抜け、角をいくつか曲がり、ついさっき通っていた廊下の窓の外へたどり着いた。

ハリーはよく見回したが何もいなかった。

黒い塊…

もしかして、あれがグリムなのだろうか。

もしかして本当にグリムが僕を狙っているのか…。

ハリーはほんとにグリムがいるかどうか確かめてみようと思っていた。

その時、すぐ近くの森の中で何かが動いた。

「あそこだ!」

動いた影に向かってハリーは走って行った。



何か、変な気分だった…。

まるであの黒い影に誘われている様な…。

なぜか落ち着かない。

森の中に入って少しして、立ち止まる。

あたりはしんとしていた。

この辺りにいるはずだと、ハリーは歩くことにした。

少し奥まった所に来ると、木の影から人の形が見えた。

「誰…?」

ゆっくりと近づくと人影がぴくりと動く、でも逃げる気配はないようだった。

ぎりぎりまで近づくと、人影が振り返ってハリーの方を向いた。

人影の正体は男だった。顔は長い髪の毛で隠れていて表情が見えにくく、ボロボロの服を着ていた。

髪の隙間から薄灰色の瞳が見えた。

ハリーはこの顔を見た事があると気付いて記憶をたどってみる、確か…。

ハッ

「シリウス・ブラック…!!」

ダーズリーの家のテレビで見た顔と同じだ。

「なんで…ここに?」

シリウスの瞳はじっとハリーを見据えていて、またハリーは落ち着かなくなった。

「ハリー…」

ビクッ

シリウスが突然口を開く。低くて、少し掠れた声だった。

「君を…一目見ておきたかった…」

「…僕を?」

何か、様子が変だ。

この男は僕を殺そうと狙っているんじゃないのか?

何で杖を構えない?

「…僕を…殺す為に?」

「…それは違う…」

ゆっくりと、静かにシリウスが呟いた。

「何が違うんだ!僕の父さんと母さんを殺して、次は僕の命を狙ってるんじゃないのか!?」

ハリーは怒鳴ってしまった。

何かが違う…こんな事言いたいんじゃなくて…!

何かがひっかかっている。

「…確かに…私は君の両親を殺したも同じだ…だが、君を殺すなんてありえない」

最初は重く、最後ははっきりとした口調だった。

「…君の声をもう一度…聞きたかったんだ」

ーもう一度…?

「僕は…あなたと話した事なんかない」

するとシリウスは、

「…だろうな…」

と、自虐的な笑みを口元に浮かべながら呟いた。

ー何で、そんな悲しそうな顔をするの?

あなたは笑いながら人を殺せる狂気殺人者じゃないの?

ー何でこんなに…

この人を懐かしく感じるんだろう…。

パパとママを殺したのはこいつなのに…!

頭の中で誰かが違うって言ってる。

「…この姿のままきみに会うのは早過ぎたな」

そう言ってハリーに自分の杖の先を向けた。

「(…殺される!)」

ハリーは足がガタガタと震えだし、全身に緊張が走った。

ーやっぱり殺す気だったんだ、何で懐かしく思ったりしたんだろう…!

「ハリー…」

シリウスはハリーに近づき、緊張してからだが動かないハリーの額の傷に触れた。

「怖がらせてしまってすまない、これから、何があろうときみだけは私が守るから…」

「え…」

「今の言葉以外、ここであった事はすべて忘れてくれ…」

次の瞬間、シリウスの杖の先が光り、ハリーは意識を失った。






「…リー!ハリー!」

「…あ、れ?」

ハリーの口から微かな声が漏れる。

気がつくと、見慣れた天井の下でロンとハーマイオニーがハリーを覗き込んでいた。

ハリーは自分のベッドに寝ていた。

「いきなり外に飛び出して行って、しばらく帰って来ないと思ったら、ベッドに寝てるんだから、びっくりしたよ」

「そうよ、探したのよ?私達。どこに行ってたの?」

そう言われても、ハリーもさっきから思い出そうとしていたが、どうしても思い出せない。

ただ一つ憶えているのは「君を守る」という誰かの声だけだった。

「わからない…僕何してたんだろ?」

「忘れてるって事はそんなたいした事じゃないのさ、早く夕ごはんを食べに行こうぜ、きみを探して腹ペコだよ」

「あら、そんな事言って、一番焦ってたのは誰かしら?」

「君だろ?」

ーああ…また始まった…。

「ごめんね、心配かけて、探してくれてありがとう二人共」

ハリーはそう言って二人に笑みを向けた。

なぜか判らないが、ハリーは心の中が自信で満ち溢れている気がした。

心の奥で微かに、誰かと再会できる事を望みながら…









END













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