ホグワーツで逢いましょう☆
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「はぁ…」

リビングでテーブルに向かい合っている二人のうち一人が今日数回目のため息をついた。

「シリウス…うるさいよさっきから」

もう一人の男、ルーピンが紅茶を啜りながらうんざりした目を向ける。

「ああ…すまない」

「まあ…気持ちはわかるけどね…」

この春、やっとシリウスの無罪は証明され、自由の身となった。

自由になって、真っ先に駆けつけたのはもちろん誰よりも愛しいハリーのもと。

夏休み初めから二人で住み始め、幸せな日々を送っていた。

しかし明日からはもう新学期、シリウスの心には暗雲がかかる。

「これから半年以上ハリーに逢えないなんて…」

一日でも辛いのに…とテーブルにうなだれる。

「(へたれてるなぁ…)」

友に聞こえない様、ルーピンは心の中で呟いた。

そのハリーは今、自室で明日の準備をしている。本当にホグワーツに行くことを楽しみにしているのだ。

「…シリウス」

やっと紅茶を飲み終わったルーピンが口を開いた。

「なんの為に僕がここに来たと思う?」

「は?」

私とハリーの邪魔をする為だろう。と毒づきそうになったが、怒らせたら恐いので

「さあ…」と惚けた。

そんなシリウスの心を知ってか知らずか、ルーピンはにっこりと微笑む。

「実はね…君にニュースがあるんだ」





次の日。

9と3/4番線にハリーを見送るシリウスの姿があった。

「じゃあな、ハリー…」

「うん、シリウス浮気しちゃダメだよ?」

ハリーは無邪気に微笑む。

「ああ、誓うよ」

シリウスも笑いながらハリーのおでこにさようならのキスをした。

この二人の半径1.5メートル以内は誰も近づく事ができない雰囲気だ。

ポーーーーーッッ!!
汽笛が鳴り、列車が動き出す。

あっと言う間に列車は山の間を通り、見えなくなってしまった。

「行ってしまったね…」

シリウスの背後に居たルーピンが声をかける。

「一緒に乗ってしまえば良かったのに」

「そうなんだが…直前までバラしたくなくてな…この年になっても悪戯好きの血は薄れていないらしい」

「三つ子の魂百までだよ」

二人は顔を見合わせて苦笑した。


そう、これはまだバレてはいけない。
とっておきの秘密。





「ハリー、シリウスと暮らしてみてどう?楽しい?」

列車の中、一つのボックスを陣取り、ハリー達は久しぶりの会話を楽しんでいた。

「もちろんさ!すっごく楽しい!」

聞いて!オーラを発しながら、ハリーはハーマイオニーに頷く。

「例えばそれはどんな風に?一緒にお風呂入ったりもしてるの?」

ハーマイオニーのナチュラルな質問の仕方に、ロンは

「うわ!いきなりそれから聞くのか!」

と心の中で突っ込んだ。

「うん、毎晩一緒だよ」と、今度はハリーがすごい事を言った。

もうロンには天然で会話する二人を止める事はできない。

聞かない事にしよう…とロンは心の中で誓い、窓の外を見た。

「あっ…」

気がつくと、もう目の前にホグワーツ城が近づいていた。





大広間に食事が並び、久しぶりのホグワーツでの食事に誰もがはしゃいでいた。

ロンのいくつもの皿はいつもの通り山盛りだし、

奥の方ではフレッドとジョージがネビル達に新しい悪戯お菓子を試していた。

ホグワーツに帰って来たんだなぁ、と思う。

でも、ここにはシリウスはいない。

「(シリウス…今ごろ何してるかな…)」

スープを見つめながらハリーは少し寂しくなってしまった。

わああああ!!

突然、拍手が起こった、どうやらダンブルドアがスピーチを始めるらしい。

「皆の衆!久しぶりのホグワーツの食事を懐かしんでおるかの?」

一斉に拍手や歓声が起こる。

大広間が震えるほどの歓声にダンブルドアは眼鏡の奥で微笑んだ。

「さて宴もたけなわじゃが、今年の新しい『闇の魔術に対する防衛術』の先生を紹介しよう!!」

ガチャッ

「「「あ」」」

「なにっ!?」

三人と一人が驚きの声を洩らす。

一人は明らかに嫌悪感を表していた。

「シリウス・ブラック先生じゃ」

「はじめまして」

シリウスがみんなに向かってにっこり微笑むと、今までシリウスに見とれていた女子達が一気に叫び声をあげた。

「ハリー!これってどういう事?」

「ハリーなんで教えてくれなかったのさ!」

ハーマイオニーとロンが放心したままのハリーを揺さぶった。

「し…知らない…僕何にも聞いてない…」

一番信じられないのはハリーだ。

今朝までエプロンを掛けて朝食を作っていたシリウスが、まさか。

ガタンッ!

「校長!何のおつもりだ!

吾輩はこんな男断じて認めませんぞ!!」

いきなりスネイプが立ち上がり、シリウスを指差し、怒鳴った。

「セブルス…そうは言うがの、シリウスはあの誰も出る事ができんアズカバンから生きて帰って来たのだ…

その上、件の事件では見事に悪の手からハリーを守り通した…

これ以上の適任がいるとは思えんがの?」

「ぐっ…」

もっともであるダンブルドアの言葉に、スネイプは何も言う事ができなかった。

その代わり、視線をシリウスに向け、思いっ切り力の限り睨み付けた。

その視線に気付いたシリウスも負けずに力の限り眼光鋭く睨み返した。

二人の目からは火花が発されちょうど二人の間で座っているダンブルドアの帽子のてっぺんでぶつかった。






食事が終わり、大広間から一斉に生徒達が出てくると、途端にシリウスは女子生徒数人に囲まれてしまった。

「先生って、アズカバンから生還なさったんですってね!すばらしいわ!」

「先生お幾つなんですか?奥さんとかはいらっしゃるんですか?」

等々。身動きできないほど囲まれ、質問攻めにあっている。

「シリウスってば人気あるのね…」

その光景を遠くでハリー達と見ていたハーマイオニーは、改めてシリウスの人気と女子のミーハーさに圧倒されていた。

「今あの中へ行ってシリウスに話しかけたら多分殺されるよ、君…」

ロンも呆れた声で言う。

ハリーは人気があるのは知っていたが、実際こうやって目の当たりにするとイライラした。

今すぐあの中へ行って「シリウスは僕のだ!」と叫んでやりたい。

すると、質問攻めに困っているシリウスがこちらに気付き、女子達に「もう寮へ戻りなさい」と言い残してハリー達の方へ向かって来た。

「やぁ、三人共、びっくりしたかい?」

「『びっくりしたか』ですって?しない方がおかしいわ」

ハーマイオニーが腕組しながら答えた。

「でもおめでとう、シリウス、

今年の『闇の魔術に対する防衛術』の授業が楽しみだよ!」

「あまり期待し過ぎないでくれ、ロン」

シリウスが苦笑する。

一人、ハリーは俯いたまま、シリウスを見ようとしなかった。

「……」

「?

どうしたんだ?ハリー」

シリウスは何も言ってこないハリーを不思議に思う。

「ああ、シリウスが女の子にもててるからいじけてるのよ♪」

ハーマイオニーがくすくすと笑いながらシリウスに告げる、シリウスはそうなのか?と不思議そうにしていた。

「!ハーマイオニー!何言って…」

いじけてなんか無い、と弁解しようとしても、シリウスはすでにハーマイオニーの意見に納得してしまった様だ。

「ハリー…ちょっと」

そう言ってシリウスは屈み込みハリーの耳に口を近づけた。

「(今夜私の部屋へ…前リーマスが使っていた部屋だ…)」

と囁いた。

「…いいの?行っても……」

ヒイキにならない?

とハリーが不安そうな顔をした。

「業務時間外だ、それと来る時はもちろん透明マントを使ってな…」とウィンクされる。

ハリーの顔がぱあっと明るくなる。

それだけでハリーは機嫌が直ってしまった。

今はもう、シリウスと二人きりになりたくて仕方がなかった。

「さあ、もうとっくに寮に戻る時間だ、三人共早く…」

「「ちょっと待った!」」

重なった声と共に同じ顔がロンの両肩から出てきた。

フレッドとジョージだ。

「うわ!びっくりした!どっから出てくるんだよ!」

「あんたがシリウスさん?」

ロンの言葉を無視し、二人はシリウスをじろじろと見回した。

「ふ〜ん…シリウスさん、あんたハリーと同棲してるらしいな」

「我らがハリーを独り占めするなんて、いきなり出てきて調子良過ぎないかい?」

二人はいかがわしそうな顔でシリウスを見上げ品定めしている。

まるで息子を取られた姑のようだ。

「ああ、君達がフレッドとジョージか、ハリーから話は聞いているよ。私達の作った『忍びの地図』を大事に持っていてくれたそうだね」

感謝してるよ、とシリウスは二人に握手する。

「「え!?あれを作ったのがあなた!!?」」

二人は突然の驚愕のあまり中途半端に恐縮していた。

「ああ、ちなみにパッドフットだ」

「すごい!まさか生きている内に本人に会えるなんて!」

「待てよフレッド、ハリーに話を聞いて作ってるだけかもしれないぜ」

ジョージはまだ信じられない、と疑いの目を向けていた。

「ああ…それと、君達が作った悪戯お菓子を食べてみたんだが…」

それは夏休み、ハリーの誕生日に送られてきた物だった。

シリウスはまた屈み、フレッドとジョージにひそひそと何事かを話していた。

それを聞いた途端、二人は揃ってシリウスの事を

「「師匠!!」」と叫んだ。




「あの二人…多分本気でシリウスに弟子入りするよ…」

二人の双子の兄の行動にため息をつきながらロンがベッドに潜り込む。

「じゃあ、気をつけて行ってこいよ、ハリー」

「うん!」

ハリーは急いでパジャマに着替え、透明マントを被り、足早に寮を後にした。

ルーピン先生の使っていた部屋への道のりは覚えてる。

ハリーは部屋の真下の階段までたどり着いた。

「…!」

上の部屋から声が聞こえる、口論しているようだ。

バンッ!!

ドアが内側から勢いよく開き、スネイプが部屋から出てきた。

(ヤバい!)

ハリーは急いで影に隠れ、顔だけだして階段上の様子をうかがった。

「貴様らがした事を一切忘れろというのか!」

「忘れろとは言ってない、こっちも謝る気なんかさらさら無いからな」

(シリウスの声だ…)

「…お前も解ってるだろう、ペティグリューは捕まったが、例のあいつは生き返ってまだ野放しのままだ。

…ハリーの危険はこれまで以上に及ぶだろう」

(…!)

シリウスの声が低くなる。

ハリーの背筋にゾクッと悪寒が走った。

「…それがどうした」

「だから私達でハリーを守ろうというんだ、…こんなこと私は言いたくないが、

お前だってハリーを守りたいと思っているんだろう、スネイプ教授?」

(スネイプが…?)

まさかとは思うが、否定しないという事はそうなんだろうか…。

「…吾輩は貴様のそういう所が嫌いだ」

「それは光栄だ」

バサッ、と

マントをひるがえし、スネイプが階段を降りてきた。

「ああそれと、私がこんな事を言うからってリーマスに薬を送るのを止めるなよ」

バタンッ

上の方で扉の閉まる音がした。

シリウスが部屋の中に入って行った音だ。

「フン…どうだかな」

スネイプが離れて行くのを確認し、少し経ってから階段を登った。

今の話を聞いていた事をシリウスに知られたくなかった。

コンコンッ

「シリウス、僕だよ…」

ガチャッ

「ハリー」

シリウスがハリーを部屋に迎え入れる、大広間で会った時よりも元気が無い様だった。

ハリーが部屋に入るとテーブルの上にカップが置かれていた。

「ああ、さっきスネイプが来てね」

忘れてた、とつえを降ってカップを流し場らしき所へ移動させ、今度はハリーへの紅茶を用意した。

ハリーは近くにあった椅子に腰を下ろした。シリウスにできたての紅茶を貰い身体を暖めた。

いつもの、大好きなシリウスの味だった。

正面の椅子に座り、シリウスがおいしいかい?と聞いてくる。

ハリーも笑顔でうん、いつも通りおいしいよと答えた。

「そう言えばさ、シリウスどうやって先生になったの?」

「ああ、リーマスが教えてくれた、私がここの先生になる事は前からダンブルドアが決めていた様だ…」

シリウスが急に塞ぎこんだ。

何を言おうとしているか解る。

「…ここも…もう安全じゃ無くなって来たんだ、こんな事はあまり言いたくないが…」

シリウスがなおさら顔を沈めた。

こんな辛そうなシリウスを見たのはヴォルデモートが復活した時、ダンブルドアの部屋で一部始終を話した時以来だった

ハリーは机に身を乗りだし、シリウスのおでこに軽くキスをした。

「シリウス、僕大丈夫だよ、シリウスが居るもん…」

「ハリー」

「僕なんか今、シリウスが先生になってくれた事の方が嬉しくてウ゛ォルデモートどころじゃないよ」

本当に嬉しそうな笑顔で笑う。

ハリーにとっては今のこの状況に比べれば自分がどうなるかなんて問題ではなかった。

ただ今は、シリウスと過ごしていたいとただそれだけを思った。




END














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