afternoon repose
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その日は朝から気持ちの良い日だった。
午後の気持ちよい陽が差し込むハリーの部屋で、ハリーとシリウスは二人っきりだった。
「う〜ん…」
ハリーは夏休みの宿題をしていた手を休め、思いっ切り身体を伸ばした。
今日は夏のわりに蒸し暑さが無く、逆にぽかぽかと春のような暖かさだった。
こんな日はどうしても眠たくなってしまう。
「終わったかい?ハリー」
ベッドに背もたれ、本を読んでいたシリウスも、本を閉じハリーの羊皮紙を覗く。
「ん、もう少し」
「少し休もうか、何か飲み物でも持って来よう」
そう言ってシリウスは立ち上がり、ドアの向こうへと消えて行った。
この春、ついにシリウスは自由の身となった。
それを機に、今は約束通りハリーと二人きりの生活を、静かな山の中で送っている。
真の罪悪人としてペティグリューが捕まり、世間的に歩いていても罪人としての目で見られる事は無くなった。
しかし、逆に、世間はシリウスの事を違う目で見る事が多くなった。
アズカバンから生きて帰れたツワモノとして見る人。
好奇心の目で見る人。
そして、憧れの目で見る人。
(この場合、主に女性が多い。)
この事にハリーはいささか不満があった。
あんなにシリウスの事を悪人よばわりしておいて、罪が無くなった途端、
しかもその人がかっこいいと解ると周りの態度が一転し、黄色い声が上がった。
まったく、調子が良過ぎないかと思う。
その為、買い物に一緒に行く時等は嬉しい半面、嫌な気分になる。
視線が気になって買い物どころでは無い。
「ーシリウスは…僕のなんだから…」
机につっぷしたまま、ぽつりと呟いた。
「じゃあ君は私のものだ、ハリー」
「!」
気付くといつのまにか部屋に戻って来たシリウスが両手にジュースを持ちながらドアの前に立っていた。
顔が綻んでいる。
「…今の聞いてたの?」
「もちろん」
ジュースを二つテーブルに置き、さっきまで座っていたベッドの横に背もたれながら腰を下ろした。
「私はこれからもずっと君一人のものだ、そしてハリー、君も私だけのものだ、誰にも渡さない」
「シリウス…」
ハリーの胸に暖かいものが込み上げて来る。
今までそんなこと誰にも言って貰った事などなかった。
ずるい、こんな事言うなんて…。
「…」
ハリーはシリウスの所膝でへ移動し、向かい合う様にしてシリウスの両足の間に膝立ちした。
「えへへ…」
照れくさそうにハリーが笑う。
「シリウス…大好きだよ」
と言われ、唇にちゅっと口づけをされる。
「ハリー…」
シリウスが両手でハリーのほおを包み、今度はこちらから顔を引き寄せる。
唇に触れようとしたその時ーー…
ピンポーーーン!
「!?」
誰だこんな時に!!
シリウスは居留守してやるつもりだった。
が、
ピポピポピポーーン!
まるで「中に居ることは判ってるんだ、早く開けろ」と言われている様なチャイムが連続して鳴った。
「いやぁ、偶然近くを通ってね!」
他から見れば人あたりの良い、柔和な笑みを向けて、いけしゃあしゃあとルーピンは言う。
そんなルーピンの本当の目的に気付いていないハリーは
「いらっしゃい、先生♪」
と嬉しそうに丁重にもてなし、リビングには紅茶の良い香りが漂った。
ただ一人シリウスは、ハリーが嬉しそうにルーピンをもてなしているのでルーピンを追い出せず、
おあずけを食らった犬の如くいじけていた。
「くそ…っ」
END
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